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ひっそりヲタなはなし。 えば熱復活中(ミサ加持限定)。 ブログ内全ての無断複製及び転載を禁じます。
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「お姫様は今日もご機嫌斜めか」

加持くんの声で我に還った
わたしは慌てて怒ったふりをする

「何よその馬鹿にした言い方」

彼はニヤニヤしながらわたしの頭からつま先まで目を泳がせて言い放った

「それは葛城が俺のお姫様だからだろ」

相変わらずの軽い台詞に呆れるのだけれど悪い気がしない
この人ってどうして人を喜ばせる事が上手いのかしら

でも肯定する訳にも褒める訳にもいかなかった

「よくもまぁそんな台詞吐けるわね」
「まぁもっともあんたのお姫様はあちこちいらっしゃるんでしょうけれど」

自分でもイヤになる位可愛くない言葉しか返せない
それでも加持くんは笑顔を返してくれる

「つれないなぁ」

とつぶやきながら満面の笑み

このままではマズい
よく考えたら無視すればいいのに会話してるし
加持くんのペースに乗せられてしまいそう
...いやもうそうなのかも

とにかく突き放さなきゃと言葉を繋いだ

「だいたい何でいつもわたしが移動するルートにあんたがいる訳」
「特にエレベーターとか」

彼に比べてわたしは会話の誘導が下手だ
口をつく言葉がどれもこれも物語ってる

「気になるのかい」

加持くんが余裕たっぷりに返して来てわたしはさらに焦った
何か負けない様に言わなきゃと必死で出した言葉

「いえいいわ...そんなことどうでもいい」
「と、とにかくわたしの視界から消えてくれる」
「目障りなのよ」

うわ〜あたし言い過ぎだよ

「酷い言い方するなよ傷つくだろ」

でも加持くんはまだ笑っていて...
少し胸が痛む

憎まれ口叩いてるのは誰のせいだと思ってるのよ
あんたがちょっかいかけて来なければ
あたしはもう少しだけマシな人間でいられるのに

なんだか泣きたくなってくる
もちろんそんなこと自分自身が許さないけれど

そして

『何よ...本当に傷ついているの』
『加持くんなんて自分のことしか考えてないくせに』

と口にしてしまったと思った

加持くんの表情が曇る
まるで子供が傷ついた様な顔にわたしは戸惑った

それでも加持くんのペースに巻き込まれてはいけないような気がして
とにかく喋り続けようとした

「だいたい何でいつもわたしが移動するルートにあんたがい...」

しまった
またおんなじこと言っちゃった
ずっと焦って言葉でごまかし続けるわたしには全く余裕がないのだ


「...いい加減黙れよ」


加持くんの声が少しだけ怒っている

声の方に視線を送るとわたしを真っ直ぐ見つめていた

その視線はわたしを捕らえて離さない
目を逸らすことが出来ない程に真剣な瞳で

何か言いたげな顔
でも何も言わない

けれど痛い位の視線がわたしの言葉を奪った
動揺して心臓が早鐘を打っている
唯一のごまかす方法さえ彼にフリーズされ
わたしは戸惑いながら加持くんを見つめるしかなかった

そして長い沈黙
やがてエレベーターが止まった

加持くんは社交辞令の様に優しく笑いかけ
わたしの頭にポンっと手をひとつ置いて
そのまま無言で出ていった

ふっと加持くんが吸っている煙草の匂いだけが残る
銘柄が分かってしまう

そして自分がとても傷ついている事に気づく

...彼はわたしにはあんな笑い方をしない

わたしの知らない加持くんを見たようで
意地を張り通したことをほんの少しだけ後悔した
箱の中にかすかに残る彼の気配は
別れてからもずっとわたしの心の奥底に残っている
彼の存在と重なっているようで

今度こそ独りぼっちになったエレベーターの中
ふと足元を見ると似合っていない白いパンプスが目に入る
そういえばあの時...8年振りにキスをした時もこのパンプスを履いてた

なんでまた履いているんだろう

わたしは加持くんにまた触れて欲しかったのだろうか

自分でもびっくりする様な理由が浮かんで
無理やり頭の中で否定する

違う違う
大人に見られらかっただけだもん

子供染みた言い訳を何度も何度も反芻して自分を落ち着かせた

エレベーターが開く

そこからはわたしの戦場
箱の中に残る想いを振り払うようにわたしは外へ出た
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