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ひっそりヲタなはなし。 えば熱復活中(ミサ加持限定)。 ブログ内全ての無断複製及び転載を禁じます。
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無意識に押した番号

それは遠い昔に付き合っていた頃の
加持の携帯番号だった

ミサトはワンコールした所でハッとする

慌てて切ろうとボタンを押しかけた所で
相手の声が聞こえた

「加持です」

少しだけ余所行きな声
だが間違いない彼の声で

電話をかける予定だった相手が出たにも関わらず
ミサトは言葉に詰まる


「・・・えっと」


一瞬の間


「・・・君から電話なんてめずらしいな」


電話口の声は穏やかに低く響く

ミサトは加持の声が好きだった
他にはない印象的な声で
『葛城』と呼ばれるだけで心臓が震えそうになる時さえあって
未だにその声を独り占め出来た至福の時間を忘れる事が出来ない

歳を重ねた分少しだけ低音になった加持の声は
それでもやはりミサトの心を捉える

また顔が見えない分
学生時代に戻ったような気がした

(そっか、まだこの番号使っていたんだ)

あの時の回線を残していたのだろうか
NERVから支給されている携帯電話以外に
ミサトも外部の友人向けに個人用の物を持ってはいたが
番号は昔とは違う

加持と別れてからすぐに携帯電話の番号を変えた

その時はとにかく連絡を取る術は全て取り除きたかったのだ
けれどリツコには本当に叱られた

(あれは凄い剣幕だったわね・・・)

学校を去って一ヶ月過ぎた頃
真っ先に電話をかけた受話器の先の美しい友人は
少し涙声だったのを覚えている


実はリツコに連絡を取るまでの1ヶ月半
初めての軍隊生活は厳しく頭も体も酷使した
また外部との連絡も取ることも禁止されていたので
当然携帯電話は一時的に没収されていた

だがこの生活で忘れられると思った加持の事は
結局頭から離れる事はなかった

消灯時間になると二段ベットが並べられた共同部屋は真っ暗になる

セカンドインパクト後に暗闇が苦手になったミサトは
寝る時はいつも小さな電球を付けていたし
ここに来る前には加持が傍にいてくれたから安心して寝られた
たまにフラッシュバックしてパニックになる時も
加持が必ず抱きしめてくれた

忘れるどころか恋しくなるばかりで

あの時の事は今思い出しても
心が痛いというか胸が苦しくなる・・・けれど
もう8年も前のこと


「随分と愛着あるのね...まだこの番号使ってたの」


ミサトは胸の内を悟られないように
なるべく明るい声を出すように努める


「どこかのお姫様からかかってくるかもしれないと思ってたからさ」

「あんたにはお姫様が沢山いるものね」

「なんだよヤキモチか?」

「ンなワケないでしょ〜が」

「相変わらず連れないなぁ〜」

「・・・バッカみたい」


いつもの調子で返してくる加持の声も明るかったが
ミサトも用件どころか加持の冗談が絡みの話に付き合い
ふたりともどこか空周りしているような応酬で
思わずミサトはため息を付き呟いた


「ホント、何やってんだか」


電話の向こうの加持も
苦笑いしているように感じる

その加持の声がそれまでと変わった

「それよりどうかしたのか・・・緊急の用事とか」


ミサトが加持に電話をかけるのまでに1時間

携帯電話を持ってマンションを出たり入ったり
自室の机に座って考え込んだり
お風呂場に入り込んだり

シンジもアスカもミサトが落ち着きなくうろうろしているのを見て
最初こそ気遣っているようだったが
そのうち放っておくことにしたらしく傍観者を決め込んでいた

そんな2人に気がついて慌ててマンションを出てルノーに乗り込み
やっと繋がった電話だった

ただ日向に教えてもらった電話番号とは別の番号をかけてしまったが



「・・・ただお礼が言いたかっただけよ」

ミサトはそれまでの迷いを吹っ切ったかの様に
一気に話しだす

「シンちゃん達本当に喜んでいたから」

「とても楽しみにしていてみんなの分の一生懸命お弁当を作って」
「帰ってきてからもいろいろ話してくれたのよ」

「NERVに来て以来ずっと大変な思いさせてきているから」
「あんなにはしゃいでいるシンちゃんを見るのは初めてだったし」

加持がシンジやアスカ達を社会見学に
海洋生物研究所へ連れて行ってくれたことの
お礼をミサトは丁寧に述べた


「そんなに喜んでたか」

加持はミサトの電話の理由を知り
嬉しい様な寂しい様な複雑な気持ちになる

それでも最近ミサトには殆ど無視されていたせいもあって
こんな言葉をもらえるとは思わなかった

ミサトのすまなそうな声

「・・・わたしが行けなくて申し訳なかったんだけれど」

それはミサトを傷つけるだけだと思うと
加持の口調が強くなった

「いや、葛城は着ちゃ駄目だ」

しかしすぐ柔らかくなる声

「・・・ほら俺は暇だしさ」

受話器越しのミサトの声もホッとしたようだった

「うん・・・本当にありがと」

加持はあまりに素直なミサトの反応に声を失う
きっと傍にいたら抱きしめてしまうんじゃないだろうか
そんなことを思う

けれどすぐ現実に引き戻される

「じゃ切るね」

「ああ」



ミサトの電話はすぐに切れた

(・・・相変わらず素っ気ないなぁ)

でもそれがミサトらしいと思う

加持は胸ポケットから煙草を出し
口にくわえたが火を点けずにすぐにライターを下ろす

そしてここではないどこか遠い所を見ているようなまなざしで
ふっと微笑んだ

「・・・覚えてたのか」
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