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ひっそりヲタなはなし。 えば熱復活中(ミサ加持限定)。 ブログ内全ての無断複製及び転載を禁じます。
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「ローソク出ーせー出ーせーよー」 
「出ーさーないとー かっちゃくぞー」
「おーまーけーにーひっかくぞー」

(…あれ、なんでローソクって言うのかな) 

(実際にもらうのはお菓子なのにね)


幼かった、夏の日。


七夕には提燈を持って、こんな歌を歌いながら

友達と町内会の家々を回った。

そこでもらったお菓子が袋一杯になるのが嬉しかった。
帰りに星空を見ながらそのお菓子を食べたことを思い出す。


(それにしても短冊…何書けばいいんだろ)


ミサトのデスクの上には、シンジに渡された七夕用の短冊が何枚か
6月もそろそろ終わりにさしかかり、シンジは七夕飾りの準備をしていた。


「アスカ、やったことないっていうし」


相変わらず衝突ばかりしているシンジとアスカだったが
お互いのことを気遣い、思いやる気持ちがあることを
ミサトはよく分かっていた。

今度のことも故郷ドイツをを離れ、日本で任務に就いているアスカに対して
少しでも楽しんでもらいたいという、シンジの気持ちからなのだろう。

それにしても子供の頃とは違って、いざ何か願いごとを書こうとすると
自分でもびっくりする程に、現実的なことしか浮かばない。

使徒の殲滅、とか
安月給何とかして、とか
ゆっくりお酒を飲みたい、とか
温泉に行きたい、とか


(何か夢がないなぁ…)


自分が仕事漬けの日々を送ってると、改めて実感するだけで

結局書いたことと言えば


『みんなが元気で健康でありますように』


という平々凡々な文句だった。


もっと夢があったり色気がある話とか…はないかと思う。
でも、流石に30歳まで結婚とか冗談で済まされないだろうし
…と、思うとため息をついた。


(結婚なんてする気ないか)
(そいえば、結婚式もすぐだっけ)


大学時代の友達は30歳を前にどんどん結婚していく。
もう残っているのは自分とリツコ位だった。


(でも、そういう願望ないし)


心の奥底に残っている古い傷跡が

チクリと痛んだことに、ミサトは気づかない振りをした。



「あ、ミサトさんも持ってきてくれたんですね」

ミサトが提供した作戦部の予備会議室で
シンジは沢山の折り紙に囲まれて、器用に七夕飾りを作っていた。
同居している家での家事もそうだが、何でもそつなくこなすシンジに感心する。


「急に忙しくなったら困るし、渡しておこうと思って」

「ありがとうございます、一枚だけですか?」

「こう見えても欲がないのよ」

「じゃ、家にも飾りたいのでもう一枚だけ書いて下さい」


シンジは新しい短冊を差し出した。

シンジが作業している作戦室の大きなテーブルには、かなりの数の短冊が集まっていた。

ミサトは何冊かに分けられ、綺麗に並べられた短冊の束の一つを手にとって読んでみた。


『家内安全、火の用心、無病息災、一家団欒』

『彼女が欲しい』

『長期休みが取れますように』


(やっぱり子供の時みたいに、夢を書いてる人はいないか)


人類の存亡をかけた戦いを強いられる職場にいれば
誰でも現実的になるのだろう。

けれど、ミサトはそんな短冊に書かれたささやかな願いに
だれもがしあわせになることが出来れば、と思うのだった。

束を元の場所に戻そうとすると
ふと、見覚えのある字が目に入り、その短冊を手に取った。


『作戦部長殿と天の川が見れますように』


(何よ、これ)


職員から集めている短冊は、無用なトラブルを避けるため

名前を入れないルールだったが、ミサトには誰が書いたかすぐに分かった。


「あのバカ…」


全く鬱陶しいんだから、とミサトは顔をしかめた。

それから彼女はしばらく考えていたが
短冊に『ねがいごと』を書いて、シンジに渡した。


『彦星が織姫に無事出会えますように』


(ま、簡単には出会えないと思うけれど…)


ミサトはクスリと笑うとあの歌を口ずさみながら、部屋を後にした。
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